介護保険

介護サービスの利用の手続き方法や利用料の負担について知っておきたいこと

介護保険のサービスを利用するにはまず「要介護認定の申請」が必要になります。ここでは、ご本人やご家族が迷わず申請手続きが行えるよう、申請方法や相談窓口、サービス利用までの流れ、また1ヶ月にかかる利用料金、利用者負担の軽減などについて説明いたします。

介護や支援が必要だと思ったら、地域包括支援センターや市町村の介護保険担当窓口へ相談しましょう。早めに行ケアマネジャーに関わってもらうと手続きなどスムーズですよ。

介護サービスを利用するにはどのような手続きが必要になるのか

  • 介護保険を利用する場合は、お住いの市区町村に要介護(要支援)認定を申請し、認定を受けます。
  • 認定を受けたあと、介護支援専門員(ケアマネジャー)等が作成したケアプランに基づき、サービスを利用します。
  • 要介護(要支援)状態に該当しない「自立」の方は、地域支援事業を利用できます。

申請窓口や手続きについて知りたい!

申請からサービス利用、利用料金の支払いまでの流れは以下のとおりです。

Step1.市区町村の窓口に要介護(要支援)認定を申請します

手続きは、ご本人やご家族のほか、地域包括支援センター、居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)、介護保険施設、地域密着型介護老人福祉施設に依頼できます。

*第2号被保険者の方は「医療保険者の被保険者証」の写しが必要になります。

Step2.市区町村による要介護(要支援)認定が行われます

認定調査

市区町村の認定調査員がご自宅を訪問し、心身の状況について本人やご家族から聞き取りなどの調査が行われます。調査の内容は全国共通です。障がいなどのため意思疎通が難しい方などは、無料で通訳などが同席する制度を設けている市区町村がありますので、事前に市町村にお問合せください。

主治医意見書

市区町村から直接、主治医(かかりつけ医)に医学的見地から、心身の状況について意見書を作成してもらいます。(市町村から直接依頼)主治医がない場合は、市区町村が医師を紹介しています。

審査・判定

認定調査の結果と主治医の意見書をもとに、保健・福祉・医療の学識経験者による「介護認定審査会」で審査し、どのくらいの介護が必要かを判定します。要介護度は要介護1〜5または要支援1〜2のいずれかとなります。

また、第2号被保険者は、要介護(要支援)状態に該当し、その状態が「特定疾病」によって生じた場合に認定されます。

Step3.認定結果が通知されます

原則として、申請から30日以内に市町村から認定結果が通知されます。郵送された「介護保険被保険者証」には介護区分や有効期間などが記入されています。

Step4.ケアプランを作成します

「要介護1〜5」と認定された方は、在宅で介護を利用する場合、居宅介護支援事業者と契約し、その事業者のケアマネジャーに依頼して、利用するサービスを決めて、介護サービス計画(ケアプラン)を作成してもらいます。施設への入所を希望される方は、希望する施設に直接申し込みます。

「要支援1・2」と認定された方は、地域包括支援センターで担当職員が介護予防サービス計画(介護予防ケアプラン)を作成します。

Step5.サービスを利用します

サービス事業者に「介護保険被保険者証」と「介護保険負担割合証」を提示して、契約しケアプランに基づいた居宅サービスや施設サービスを利用します。具体的な内容や日時、時間帯、利用料などについてサービス事業者と話し合い契約します。

Step6.利用料の支払いを行います

利用者負担は1割〜3割です。月初始まり月末締めで計算されて翌月に支払いします。支払い方法は各事業者との契約時に取り決めます。引き落とし、振込、現金払いなど選択できる事業者もあります。

このほか要介護(要支援)認定を受けていない方も利用できる介護予防・日常生活支援サービスがあります。

サービス利用料の利用者負担はどのようになっているのか知りたい

サービス利用料の費用は介護保険からの給付分と1〜3割の利用者負担があります。利用者負担は以下の通りです。

  • 65歳以上の第1号被保険者について
    「本人の合計所得金額160万円以上」かつ「年金収入+その他の合計所得額280万円(第1号被保険者2人以上:346万円)以上の方は2割負担
    「本人の合計所得金額220万円上」かつ「年金収入+その他の合計所得金額340万円(第1号被保険者2人以上:463万円)以上の方は3割負担
    上記以外の方は1割負担となります。
  • 40歳〜64歳の医療保険加入者である第2号被保険者は、所得にかかわらず1割負担となります。

利用者負担は1割負担の方が大半を占めていますが、現役時代にしっかりと収入があった方、年金以外にも収入が発生している方などは2割や3割負担になっています。ただし、世帯ではなく個人単位で判定されるため夫婦によっても負担割合が違うことがあるのです。

また、負担割合は前年度の収入によって計算がなされます。土地や株など財産を処分したなどで一時的に所得が上がったときにも1年間だけ負担割合が2割や3割に変更されることがありますので覚えておいてください。

毎年届く「介護保険負担割合証」で自己負担分を確認できます!

要介護・要支援認定者や事業対象者には、利用者負担の割合が記載されている「介護保険負担割合証」が交付されます。サービスを利用するときは介護保険の保険証と一緒にケアマネやサービス事業者に提示してください。8月切り替えで毎年交付されます

ただし、ケアプラン作成の費用は全額介護保険で給付となるため自己負担はありません。

「要介護状態区分」に応じて決められている1ヶ月間の「支給限度額」について知りたい!

おもな在宅サービスなどでは、介護保険からの給付に支給限度額(上限額)が決められています。つまり限度額内でサービスを利用するときは、利用者負担分の割合分(1〜3割)を負担しますが、限度額を超えた場合には、超えた分にだけ保険が適応できず全額利用者負担(10割の負担)となることを意味します。

各介護度に応じて1ヶ月間に必要とするサービス量を考えてのことなのでしょう。ケアプランを立てる際には毎月の「支給限度額」を超えないように計画することが一般的ですが、超えてはいけないわけではありません。


主な在宅サービスなどの支給限度額(1ヶ月間)

要介護認定区分 1ヶ月の支給限度額 1割負担 2割負担 3割負担
要支援1 50,320円 5,032円 10,064円 15,096円
要支援2 105,310円 10,531円 21,062円 31,593円
要介護1 167,650円 16,765円 32,530円 50,295円
要介護2 197,050円 19,705円 39,410円 59,115円
要介護3 270,480円 27,048円 54,096円 81,144円
要介護4 309、380円 30,938円 61,876円 92,814円
要介護5 362,170円 36,217円 72,434円 108,651円

 

*1単位あたりの単価はサービスの種類及び事業所の所在地によって異なります。表の限度額は標準地域の場合です。

*事業対象者は原則として要支援1の限度額が設定されます

介護サービスの利用料が高額になったときの負担軽減についての知識

「介護サービスの利用者負担が高額になったとき」または「介護保険と医療保険の両方の自己負担額が高額になったとき」に定められた限度額を超えた分が申請によりあとから支給されるしくみを説明します。

介護(介護予防)サービスの利用者負担が高額になったときには?

同じ月に利用したサービスの利用者負担の合計額(同じ世帯に複数の利用者がいる場合は世帯合計額)が定められた限度額を超えたときは、申請により超えた分が「高額介護サービス費」としてあとから支給されます。

ただし、支給限度額を超えた利用者負担分などについては対象になりません。


利用者負担の上限

利用者負担段階区分 上限額(月額)
現役並み所得者 課税所得約690万円(年収1,160万円)以上 140,100円(世帯)
課税所得約380万円(年収約770万円)以上〜課税所得約690万円(約1,160万円)未満 93,000円(世帯)
課税所得約145万円(年収約383万円)以上〜課税所得約380万円(年収約770万円)未満 44,400円(世帯)
一般 44,400円(世帯)
住民性課税非課税等 24,600円(世帯)
合計所得額及び課税年金収入額の合計が80万円以下の人
老齢年金の受給者
1,5000円(個人)
生活保護受給
利用者負担を1,5000円に減額することで生活保護受給者とならない場合
1,5000円(個人)
1,5000円(世帯)

*「合計所得金額」とは、前年の収入金額から必要経費に相当する金額を控除した額のことで、扶養控除や医療費控除などの所得控除をする前の金額であり、
かつ、長期譲渡所得及び短期譲渡所得に係る特別控除額と公的年金等に係る雑所得を控除した額です。

*税制改革による控除額の変更に伴い所得への影響が生じますが、高額介護サービス費を算定する際には、その影響を遮断し計算します。

介護保険と医療保険の利用者負担が高額になったときには?

介護保険と医療保険の両方の自己負担額が高額になった場合、高額サービス費(介護保険)高額療養費(医療保険)を適応したあとの年間(8月〜翌年7月)
の自己負担額を合算して、定められた限度額を超えたときは、申請により超えた分が後から支給されます。

高額医療費・高額介護合算制度の負担額について70歳未満と70歳以上の負担限度額

以下に高額医療費と高額介護合算制度の負担限度額について表にまとめています。

70歳未満の人がいる世帯では

高額医療費・高額介護合算制度の負担限度額 (8月〜翌年7月算定分)

所得(基礎控除後の総所得金額等) 70歳未満の人hがいる世帯
901万円超え 212万円
600万円超え901万円以下 141万円
210万円超え600万円以下 67万円
210万円以下 60万円
住民税非課税世帯  34万円
70歳〜74歳の人がいる世帯と後期高齢者医療制度で医療を受ける人がいる世帯では
所得区分 70歳〜74歳の人がいる世帯 後期高齢者医療制度で医療を受ける人がいる世帯
課税所得690万円以上 212万円 212万円
課税所得380万円以上 141万円 141万円
課税所得145万円以上 67万円 67万円
一般 56万円 56万円
低所得者 II 31万円 31万円
低所得者 I 19万円 19万円
  • 「低所得者  l」の区分世帯で介護保険サービスの利用者が複数いる場合は、限度の適応が異なります。
  • 毎年7月31日時点で加入している医療保険の所得区分が適用されます。医療保険が異なる場合は世帯合算できません。
  • 支給対象となる人は医療保険の窓口へ申請が必要です。

生計困難者を助ける社会福祉法人等による利用者負担軽減とは?

市町村民税世帯非課税者で、収入、資産等の要件を満たし市町村が生計困難と認めた方が対象となります。利用者負担額の4分の1(利用者負担段階1段階の方は2分の1)

生活保護受給中の方は、個室の居住費(介護福祉施設サービス、地域密着型介護老人福祉施設生活介護、短期入所生活介護、介護予防短期入所生活介護に限る)
にかかる利用者負担の全額。

対象となるサービスの種類

  1. 訪問介護(介護予防サービス含む)
  2. 通所介護(地域密着型および介護予防サービスを含む)
  3. 短期入所生活介護(介護予防サービス含む)
  4. 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  5. 夜間対応型訪問介護
  6. 認知症対応型通所介護(介護予防サービス含む)
  7. 小規模多機能型居宅介護(介護予防サービス含む)
  8. 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  9. 看護小規模多機能型居宅介護
  10. 介護福祉施設サービス
  11. 介護予防型訪問サービス(介護予防・日常生活支援総合事業)
  12. 介護予防型通所サービ(介護予防・日常生活支援総合事業)
  13. 短時間型通所サービス(介護予防・日常生活支援総合事業)

対象となる費用について

上記1〜12のサービスを利用した際の利用負担額(1〜3割)、食費・居住費(滞在費・宿泊費)。

*ただし3・8・10のサービスにおける食費・居住費(滞在費・宿泊費)については、特定入所者介護サービス費、または特定入所者介護予防サービス費が支給されている場合に限られます。

生活保護受給者の方は、個室の居住費(介護福祉施設サービス、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、短期入所生活介護、介護予防短期入所者生活介護
に限る)にかかる利用者負担。

対象となる方の条件

世帯全員が市町村民税非課税で次のすべての要件を満たす方、及び生活保護受給中の方。

  1. 世帯の年間収入が150万円以下(世帯員が1人増えるごとに50万円加算)
  2. 世帯の預貯金等の額が350万円以下(世帯員が1人増えるごとに100万円加算)
  3. 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がない
  4. 負担能力のある親族等に扶養されていない
  5. 介護保険料を滞納していない
  6. 養護老人ホームに入所していない

負担割合

利用者負担額の4分の1(利用者負担段階1段階の方は2分の1)
生活保護受給中の方は個室の居住費(介護福祉施設サービス、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、短期入所生活介護、介護予防短期入所者生活介護に限る)にかかる利用者負担。

施設サービスの費用負担が困難にならないために食費や居住費が軽減される?

住民税が非課税世帯で年金収入だけの方は迷わず申請しましょう。ショートステイの利用時にも使える減免制度です。申請月からの対象となります。

低所得の方の施設利用が困難とならないために、申請により食費と住居費等の一定額以上は保険給付されます。所得に応じた負担限度額までを支払い、残りの基準費用額との差額分は介護保険から給付されます。(特定入所者介護サービス費等)

負担限度額について

負担限度額(1日あたり)

 

利用者負担段階 食費 居住費等

施設

サービス

短期入所

サービス

ユニット型

個室

ユニット型

個室的多床室

従来型

個室

多床室
第1段階

本人および世帯全員が住民税非課税世帯で、老齢福祉年金の受給者

生活保護の受給者

 

300円

 

 

300円

 

 

820円

 

 

490円

 

490円

*320円

0円
第2段階

本人および世帯全員が非課税で、

課税年金支給額+その他の合計所得額(特別控除後)

が80万円以下の人

390円 600円 820円 490円

490円

*320円

370円
第3段階

本人および世帯全員が住民税非課税で、

課税年金収入額+非課税年金収入額+その合計所得金額(特別控除後)

が80万円超120万円以下の人

650円 1000円 1310円 1310円

1310円

 

*820円

370円

本人および世帯全員が住民税非課税で、

課税年金収入額+非課税年金収入額+その合計所得金額(特別控除後)

120万円超の人

1360円 1300円 1310円 1310円

1310円

 

*820円

370円

介護老人福祉施設と短期入所生活介護を利用した場合は、* の金額になります。

「合計所得金額(特別控除後)」とは、前年の収入金額から必要経費に相当する金額を控除した額のことで、扶養控除や医療費控除などの所得控除をする前
の金額であり、かつ、長期譲渡所得及び、短期譲渡所得に係る特別控除額を控除した額です。「その他の合計所得金額(特別控除後)」とは、合計所得金額(特別控除後)から、公的年金等に係る雑所得を控除した額です。

税制改正による控除額の変更に伴い所得への影響が生じますが、特定入所者介護サービス費を判定する際には、その影響を受けません。

 

#注意点 特定入所者介護サービス費等が支給されない場合

以下に該当する場合は特定入所者介護サービス費は支給されません

  1. 住民税非課税世帯でも、世帯分離している配偶者が住民税課税の場合
  2. 住民税非課税世帯(世帯分離している配偶者も非課税世帯)でも預貯金等が単身1,000万円、夫婦2,000万円を超える場合

2について預貯金等の金額が利用者負担段階別になります。

住民税非課税世帯(世帯分離している配偶者も非課税)でも、預貯金等が以下の場合

  • 第1段階:単身1,000万円、夫婦2,000万円を超える場合
  • 第2段階:単身650万円、夫婦1,650万円を超える場合
  • 第3段階1:単身550万円、夫婦1,550万円を超える場合
  • 第3段階2:単身500万円、夫婦1,500万円を超える場合

*第2号被保険者の場合は、段階に関わらず単身1,000万円、夫婦2,000万円の基準となります。

 

まとめ

介護保険のサービス利用には「認定」が必要でであり「介護保険被保険者証」が届くまでは申請から約30日ほどかかります。申請は市区町村窓口で行い、申請者は本人家族以外に、地域包括支援センター、居宅介護支援事業者、入所先の介護保険施設、地域密着型介護老人福祉施設などで代行ができます。

認定結果は「要支援1・2」「要介護1〜5」の段階区分がありサービス利用を始めるには、ケアプランの作成が必要です。各認定結果で1ヶ月に利用できるサービスには「支給限度額」が決まっており、所得に応じて費用の「1〜3割負担」が発生します。「負担割合証」で自分の負担分を確認することができます。

サービス利用者負担が高額になった場合は「利用者負担の上限」が設定されており、また介護保険と医療保険の利用者負担が高額になったときにも限度額を超えたときは申請により超えた分があとから支給される制度がある事がわかりました。他にも非課税世帯で生計困難者を助ける制度として「社会福祉法人等による利用者負担軽減」が用意されています。

施設入所の費用のうち食費や居住費等においても低所得者の方は負担が軽減される「特定入所者介護サービス費等」の支給が受けられます。所得の低い方でも生活の負担にならないように軽減措置が用意されています。

すべて申請ありきの制度です。条件をよく調べて利用していきましょう。知らないと損をしてしまいます。

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