介護保険

両親が認知症になったら成年後見制度を考えるタイミングは?

ケアマネの仕事をしている私が、認知症の方を受け持つことは少なくなく在宅での生活を支えるための介護サービスの他に、どうしても考えなければならないことが金銭管理です。生活していく上で重要です。

「生活費の管理ができなくなっている」「利用料の支払いが滞っている」「公共料金の支払いができていない」など普段生活支援にはいっているホームヘルパーからの報告や相談を受けることがよくあります。

利用者様からも「この書類がわからない、見つからない」「前に支払い終わったはずなのに・・・請求書がある」「銀行からキャッシュカードで引き落としができなくなった!」と相談を直接受けることもあります。

認知症の進行により金銭管理、事務処理、手続きなどに困る時期がやってきたとき、ケアマネジャーが直接お金の管理をしたり、頼まれても通帳やカードを預かり預金を引き出すことはできません。

今回は認知症の方を支えるご家族への「成年後見制度」の紹介と利用のタイミングについて考えたいと思います。

私が経験した認知症になった高齢者の財産管理と成年後見制度利用までの道のり

以前私は、ご主人を早くになくされ、ひとりで暮らす高齢者の方を担当していました。お子さんがいらっしゃらない方でした。働き者で、「頼りになるのはお金だ」と話しており、老後のために必要なお金を準備していらっしゃいました。

自立期

堅実な方で、派手なことでは好きではなく、倹約家。私にはじめて相談に来られたときは、「お風呂の掃除が大変になってきたので助けてもらいたい」ということだけ。生活に必要なことはすべてご自身でされていたので「自立の状態」からでした。

自分の財産管理も自立している状態

要支援期

そのうち腰痛に悩まされ、介護保険を申請「要支援」の状態となり、訪問介護のサービスで掃除の支援を開始しました。生活プランもしっかり持っておられ規則正しい生活を送る。こちらもその生活ぶりには感心することが多く学ぶことが沢山ありました。

自分で財産管理できている状態を維持している

要介護期 に認知面の変化が現れた

そんな彼女が、腰痛の悪化をきっかけに段々と介護が必要になっていきました。「要支援」だったのが「要介護」へと変更され、生活維持のために必要なサービスが増えていきます。

生活様式が「和」から「洋」へ変更。介護ベッドも必要ですし、ご自宅の鍵をご自分で開けるものままならなくなってしまいました。ひとりで外出することができなくなり、認知面が低下してきたのです。

昼夜を間違うようになったり、妄想からサービスへの苦情もでてきました。亡くなったご主人の遺品整理は元気なうちにすんでおられるのですがそれがわからなくなっていました。

生活費の管理や契約ごとなどに支援が必要になっていると判断し、今まで連絡を取ることがなかったご兄弟へと連絡を取り、お互い協力して彼女の支援にあたりました。今後の潤滑な支援のためその方にキーパーソンになって頂きました。

認知面の低下が見られ財産管理に支援が必要になっている。家族の介入を依頼した。

入院をきっかけに支援の限界がみえてきた

転倒を繰り返すようになり大腿骨骨折。救急搬送で入院することになります。病院からケアマネあてに電話がかかってきました。「手術の承諾、同意を取りたい」というのです。

私にそんな権限はなくもちろん断りました。キーパーソンのご兄弟は遠方におられすぐに駆けつけることはできませんでしたが病院へ頼み電話連絡で手術の同意をもらっていただくことになりました。

この入院から、支援の限界がみえてきたのです。入院に必要な衣服、洗面用具、オムツ等の購入、入院費の支払い、リハビリ病院への転院手続き。付き添い。一番困ったのは、入院先によっては財布やカードを預かってくれるシステムがなかったことです。

入院中も毎月ごとに支払いが発生しますがご本人が金銭管理をしています。カードや現金の一部をキーパーソンに任せることを相談しました。ご本人の同意が得られご家族がいくらかを託され管理することになりましたが、病院への行き来が負担となってきます。

ご家族から不安の声が。「財産管理」についてです。いつか来る持ち家の処分や金銭管理が負担だと話されました。ここで、「成年後見制度」の利用を提案したのです。

財産管理のために成年後見制度の必要性を感じ提案。

成年後見制度の利用までの道のり

入院中にますます認知症は進行しました。お見舞いに来てくれたご家族の顔を忘れたり、妄想も進みます。短期記憶障害も出てきました。財産管理を後見制度を利用することについて提案しますが、「知らない人に任せられない」「これからも自分で管理していく」と納得されません。

退院後は老健へと施設入所されましたが、ここでも現金やカードを預かってもらえません。「自宅にドロボーが入るかもしれない」と本人も不安を口にします。郵便受けには大量に郵便物がたまり時々届けて確認していらいました。

また困ったのは「保険証」などの受け取りです。うまく受け取れず送り先に戻ってしまうものもありました。入院や入所されている方は受け取りできませんものね。

入所先に出向いては繰り返し制度につての説明を行い、財産管理を高齢者のご家族がこれからもサポートし続けるのは負担であり難しい状況であることをお伝えしました。

ご自身を判断能力に問題はなく「これからも自身で管理できる」と思っているときと、判断能力が鈍ってきているとの自覚があり「財産管理に不安がある」と制度利用について迷っていらっしゃるときがありました。

説明を受けたことも忘れてしまわれる状況でしたが、ある日、ご自身の口から「制度を紹介してほしい」とお話がありました。早速、後見人を仕事にしている司法書士さんに連絡を取り本人面談をお願いしました。

その後、無事に契約が集結し、財産管理を司法書士さんに後見人としてお願いすることができました。キーパーソンをされていたご家族からも「これで安心しました」と連絡を頂きました。

数年たち利用者様が天寿を全うされてからは、財産分与や自宅の処分などの手続きもスムーズに行われたのだとお聞きしています。

成年後見制度利用開始し、天寿全うまで。

それでは成年後見制度について簡単にざっくりと説明します

「成年後見制度」を仕事で利用することがあります。みなさんも見聞きしたことはある制度であると思います。「弁護士」や「司法書士」の方々が相談に乗ってくれ後見人として支援してくれます。

サイトで「成年後見制度」や「後見人」と検索していただければ専門家の方から詳しく説明があり、おわかりいただけると思います。ここではごく簡単にざっくりと説明しますね。

「成年後見制度」とは?あなたの財産を守る制度です

認知症や精神疾患、高次脳機能障害などで「判断力の低下」がみられた方が、自分の財産を守るために、後見人へ財産管理を任せることができます。あなたにとって大事なお金、有価証券、自宅、土地などの不動産やサービス利用の契約ごと、サービス料の支払い、入院、入所などの手続き業務をあなたの代わりに行います。

2つの分類「法定後見」と「任意後見」

「法定後見」とは 「判断力が不十分になったとき」本人や四親等内の家族などが申し立て人となり家庭裁判所が決定し成年後見人を選任します。

「任意後見」とは 後の認知面の低下により制度が必要になったときのため「元気なうちに」自分で後見人を選任しておきます。

私は、はじめ後見人を簡単にごく近い方や専門家にお願いできると思っており「家庭裁判所が選任し決定する」という意味がよくわからなかったのですが、判断力が不十分になってしまったら自分の財産を守ってくれる人を選ぶことができないため家庭裁判所が責任を持って代わりに選任してくれるということですよね。納得です。

介護に関わる仕事をしていて必要になるのは法定後見が主です。

 

申立人は誰ができるの?

本人、配偶者、四親等内の親族、市町村長などとなっています。

法定後見の後見人はどんな人に頼めるの?

信頼があり制度を熟知している点で弁護士や司法書士へ依頼することが多いです。その他社会福祉士や最近では市民後見人が後見人になることもあります。私が仕事で相談したしたことがあるのは弁護士や司法書士の方ですが、知人で社会福祉士で後見人を請け負っている方がいます。

ご家族がされる場合もありますが、ご本人とトラブルを抱えている場合にはお願いできません。

制度には判断力のレベルによって3つの類型や支援方法がある

「後見制度」では判断力が不十分な方を支援するのですが、自分がまだ少し判断能力があるならば、「保佐人」や「補助人」として支援をお願いすることができます。判断力のレベルに合わせた支援内容になります。

後見人の権限

「重度の認知症があり判断力がない」状態にあり本人には決められない、わからないことが前提です。取消権や代理権があります。

保佐人の権限

「軽度の認知症があり判断力が鈍っている」状態。同意見は特定の行動に限られ、審判でで決められた範囲内で取消権や代理権が発生します。

補助人の権限

「認知症初期の段階にあり判断力が不十分である」状態。保佐人同様に同意見は特定の行動に限られ、審判決められた範囲内で取消権や代理権が発生します。

私達の使用する契約書にも代筆欄や代理人欄が設けられています。認知症などで利用者様の判断能力が不十分である場合はキーパーソンになるご家族に署名と捺印をお願いしております。

制度の相談先について

後見制度が必要になったら「地域包括支援センター」へ相談をしています。成年後見制度へと橋渡しをお願いします。他に私は仕事の中で知り合った司法書士さんにお願いすることがあります。知人の社会福祉士さんもおりサポートをお願いしています。

「後見制度」は手続きが複雑で必要書類等準備が大変です。お二人とも成年後見制度に詳しいためとても頼りになります。以前、利用者様のご家族に司法書士の方がいらっしゃたので、後見制度のことをお尋ねしたことがありますが「僕はしていません」とおっしゃられていました。

専門家はどなたでもされていることだと思っていたので、後見人を仕事にしている方に相談が必要だとわかりました。

地域包括支援センターが成年後見制度の受付をしてくれますよ

調べてみました!申立にかかる費用

費用は申立人が支払います。申立手数料と後見登録手数料のための収入印紙代(3400円)、審判書を送付したり、登記の嘱託にかかる切手代(3270円〜4210円)や本人の能力を鑑定するための費用(10万円〜20万円)、医師の診断書代、住民票や戸籍抄本代、登記されいないことの証明書の発行手数料(収入印紙300円分)が必要になると裁判所のHPに書かれていました。

なお「鑑定」は裁判所が必要と判断した場合にのみ必要になります。

知らなかった!報酬料のこと

制度を受けるのには後見人に報酬料が発生します。裁判所で後見人の基本報酬の目安が決められており、財産管理が大きくなれば財産管理事務に手間がかかります、それに合わせて報酬も上がります。報酬額は裁判所が決定します。

基本報酬料が2万円、5000万円までの財産管理であれば3万円〜4万円、5000万円以上の財産管理になると5万円〜6万円程度が相場のようです。

ご家族が後見人になられた場合は報酬料を辞退され無償で管理されることも多いようです。「市民後見人」という生活を見守り、限られた年金などの管理を報酬を前提としない活動をしている団体もあります。

制度申込みから開始までの大まかな流れ

  1. まず、相談する
  2. 家庭裁判所へ後見を申し立てる、後見人を選任してもらう
  3. 家庭裁判所が審判する
  4. 後見開始

弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家に後見制度の手続をお願いしたら、結果まで早い方は2ヶ月遅い方では半年ほどかかります。それまでの間は、周囲の人の知恵や支援を借りて生活していくことになります。後見開始され財産管理がされればこれからは安心ですね。

覚えておこう!後見人ができないこと3つ

  1. 戸籍に関する契約の変更(結婚・離婚・養子縁組・認知など)
  2. 遺言書の作成
  3. 身体侵襲を伴う医療行為への同意(予防接種、手術等への同意)

    医療行為への同意については権限がなく、病院側から求められても断ることになります

医療行為については権限がなく、病院から求められても断ることになります。

デメリットも覚えておきましょう!

  1. 手続きが煩雑である。
  2. 一度、後見人をつけたら不正や怠惰がない限り解約や解任ができない。
  3. 後見人の判断で必要な出費かどうかが判断される。今まで通りの柔軟な対応や事実上の対応が難しくなる。

概ねこの3つです

まとめ 成年後見制度の利用のタイミング

やはり、ご本人が意思決定できる早い段階で!ご家族で財産管理を行うのか成年後見制度を利用するか決めるのががベストです。

お仕事で今まで、たくさんの利用者様、ご家族様とに出会い、認知面の低下により判断力が低下したために日常生活に支障が出てくる方を多く目にしました。

支障が出始めた段階でこれまでサポートをお願いしたことのなかったご家族と連絡をとり、支援をお願いすることで解決することがほとんどでしたが、中にはうまく行かないこともありました。

認知症ためにご本人が、ご家族様を信用されないケース、ご本人様の被害妄想からサポートするご家族様同士で誤解が生じて仲違いされてしまうケース、ご家族様が直接のサポートをお断りになるケース、身寄りのない方がいらっしゃいました。

ご本人のご様子に変化が見られたら、将来的なことを見据え、早い段階から財産管理について話し合っておくことがとても大切だと思っています。それこそ、「終活」も視野に入れて、ご意向を聞き取りご本人が望まれる方法で。

日本ではまだ話しづらい話題かもしれませんが、これからは当たり前にご両親の「終活」についても話し合っていくとよいと思います。私も、自分の両親と始めています。

財産管理を後見人に任せるタイミングのポイントは「早めの介入」とご本人の判断能力のあるうちに話し合って決めておくこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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